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●月下の舞
幸いにして雲ひとつ無くよく晴れた夜空の下で、御影・頼子(蜘蛛護りの言霊使い・b56529)は静かに座敷から立ち上がった。今宵もまた、月見の舞を舞うためだ。
「綺麗な月………今まで、澱んで見えていたのが嘘みたい。こうやって楽しく月見ができるのは6年ぶりだよ。」
それは、理人に出会えたお陰だからか…頼子は内心でそう考え、ふっと微笑んだ。
「理人さん、由比様……見ていて下さいね。」
「……ああ、見ていよう…。」
誰に言うとも無く小さく呟かれた言葉に理人が頷きながら返事をすれば、頼子からは再び笑顔が返る。
理人への思いを乗せた舞を、柔らかな月明かりが映し出す。
それは幽玄の世界へと観客達を誘った。
「頼子さんの舞、何だか今日は一段と綺麗ですよね。」
君山・雪姫(碧にして蒼雪を司りし姫巫女・b53767)が頼子と拵えてきた月見団子を供えて、香月はそう感想を述べた。そのすぐ隣で談笑しながら団子の用意を手伝っていた雪姫も、手を止めて同じほうへと視線をやる。
以前の頼子に比べて、今の頼子は危なっかしさが消えた――雪姫は最近そう感じるようになっていた。
今宵の舞も……
「あれから6年……あんなにいい表情する頼子は初めて見たよ。」
「そうだね……そうか、もうあれから6年経つんだ…。」
雪姫の言葉に香月は感慨深そうに目を伏せた。それからすぐ目を開けると優しく雪姫へと微笑み返す。それを見て雪姫はこののどかなひと時をゆったり過ごしたいと、心からの幸せを噛み締めた。
●ささやかな観月会、それから…
頼子が舞い終えて戻ってくると、理人達3人は拍手で迎えた。
それから4人で月を眺めながら、しばし談笑の時を過ごす。
決戦での応援のお礼、頼子と雪姫の変化の話、中秋の名月の由来……気心の知れた4人だからだろう、いつもは寡黙な理人も和気藹々としたその輪の中に入っていた。
「うかうかしてたら、頼子に追い越されるね。」
「それを言ったら、僕も気をつけてないと理人さんに追い越されますね……頼子さんと出会ってから、理人さんも変わってきてるからね。」
「…………追い越すか追い越されるかは知らぬ。ただ私は…頼子と共に戦えるよう、切磋琢磨するだけだ。」
理人の返事に香月が僕も同じ、と笑顔を返す。愛しい者を護りたいという気持ちはこの4人の共通の願いだった。
「理人さん……。」
頼子の唇からふと言葉が零れた。その声にすぐ傍にいた理人が振り向くとばったり視線がぶつかって。
二人のしばしの沈黙も、談笑している香月と雪姫には気づかれない――頼子がそっと瞳を閉じると、柔らかな温もりが唇に触れた。
「……ああ、来年もやりたいですね、お月見。」
ふと紡がれた香月の言葉に、雪姫は頬を薄く染めて頷く。
「………同感だ。来年はもう少し、落ち着いているといい……。」
少しの間をおいて、理人と頼子も頷いた。
月明かりは、4人を祝福するかのようにふんわりと舞い降り続ける――。
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このプロフィール画像は、株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のイラストとして、武田理人が作成を依頼したものです。
イラストの使用権は武田理人に、著作権は彪雅 マサト絵師に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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