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――初めまして、こんにちは!
其れは雪のしんと降り積む、冬の朝にて。
幼き土蜘蛛が初めて目にしたのは、微笑み――。
『……おはよう、花枝…』
『おはようございます、理人様。』
つとめて。肌を刺すように寒い中、火の気を感じてその元へ歩み寄ると、そこには我が巫女がいた。火鉢という、巫女ら人間が使う暖をとるための道具だと聞いた。
ふと興味がわいて手を伸ばす。すると花枝がとっさに手で其れを制した。
『ああっ!?危のうございます!』
『………ならぬのか……?』
『あまりお傍まで手を寄せてしまえば火傷を負われてしまいます!お気をつけ下さい。これなら……安全にございますよ。』
花枝はそういうと、まだ小さな体の私を抱き寄せて、丁度いい按配に手をのべさせてくれた。
その時の温かさを、今尚思い出すことがある。土蜘蛛となったばかりの、古の記憶だ……。
それから、私は様々なことを花枝から教わった。教養、土蜘蛛の務め、それから他愛も無い花枝の話もよく聞いた。
何時の頃か……母というものを知って、まさに花枝がそれだと思うようになった。
『まぁ何を仰るのでございます!?私は確かに蜘蛛童だった頃から理人様のお傍におりますけれども、母などと、そのような、畏れ多い………。』
私が思うままを話すと、花枝は幾分大きな声で驚いた後に次第に声が小さくなり、慌てふためいていた。
それを不思議な思いで見上げていたのは……私が齢幾許にもならぬ頃のことだったか。
今にして思えば、私が如何に幼い考え方をしていたかと嘆かわしくなる。
何事も変わらぬものは無い。変遷は不穏であろうと、平穏であろうと、等しく訪れるのだ……。
『最期の我侭を、お許し下さいませ…………どうか、お聞き入れを……理人様。』
私が元服を迎え、数年が経った頃の記憶……花枝との最後の思い出は、彼女の断末魔で終わる。
《見えざる狂気》というものなのかは定かではない。そもそも、平安の世、私が生きている間はまだ忘却期には入っていなかった。
それでも、花枝の人格や思考が狂い始めていたのは明らかであった……。
『どうか、愛しい貴方の手で……逝かせて欲しい……。』
私は、悩み悩んだ末……その願いを聞き入れた。
――《母》たる巫女を殺めた我が手は、其れ以後ずっと紅く染まり続けた。
巫女のおらぬ土蜘蛛、そして何も見ず、何も語らぬ土蜘蛛に積極的に関わろうとするのは、我等に刃向かう輩のみ。
私はただ、独り戦い続け……やがて短い生を終えた。
その私が、《無限繁栄》によって復活するなど……初めは何の戯れかと思っていた。
学園の者等と戦い、初めて敗北し……そして今に至る。
2度目の生。そして現代にて出会いし、我が巫女。我が友……。
花枝が、今際の時に残した最期の微笑みの意味を探りながら……今ひとたび、生きてみようと思う……。
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このプロフィール画像は、株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のイラストとして、武田理人が作成を依頼したものです。
イラストの使用権は武田理人に、著作権は彪雅 マサト絵師に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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